目次
住宅ローンを組む際に必要な団体信用生命保険
がん保険について解説する前に、まずは団体信用生命保険の基本的な概要について説明します。
団体信用生命保険について知ることで、がん保険の必要性についても理解しやすくなるでしょう。
そもそも団体信用生命保険とはどういうものなのか?
団体信用生命保険(団信)とは、「契約者が死亡または高度障害が残った場合に、住宅ローンの返済が免除される」という保険制度です。
(高度障害状態については明確な規定があるので、金融機関などのホームページで確認してください)
団信に加入しておけば、万が一のときでも住宅ローンの残債務が保険会社によって弁済されることになります。もしも大黒柱が事故などでローン返済ができなくなってしまっても、残された家族はローン返済に困ることなく安心してマイホームに住み続けることができるでしょう。
また、団信への加入は住宅ローンの借り入れの条件となっていることが多いです。一部の例外を除き、保険料は住宅ローンの金利に上乗せされているのが一般的です。
団信(特約)の種類
各金融機関では、団信に特約を付けることでさまざまな保障を提供しています。保障の範囲を広げたり、特定の疾患に対して手厚い保障をしたりなどです。
以下に代表的な団信の種類を9つ紹介します。
1.「がん保障付き団信」(じぶん銀行など)
2.「3大疾病保障付き団信」(みずほ銀行、ソニー銀行など)
3.「新3大疾病付き機構団信」(住宅金融支援機構「フラット35」)
4.「7大疾病保障」(三菱UFJ銀行)
5.「8大疾病就業不能保障」(楽天銀行、イオン銀行)
6.「11疾病保障団信」(じぶん銀行)
7.「全疾病就業不能保障」(住信SBIネット銀行)
8.「団信革命」(りそな銀行)
9.「全疾病保障奥さまワイド」(静岡銀行、三井住友信託銀行)
このように、団信は住宅ローンを提供する金融機関それぞれに特約が設けられています。
そして紹介した例の中にもありますが、住宅ローンにおける「がん保険」とは、団信の種類の一つなのです。
次項からは、この「がん団信」にスポットを当てて解説を行います。
がん団信って必要なのか?
そもそもがん団信というのは、住宅ローンを組むうえで必要な保険なのでしょうか?
ここからは、がん団信の概要と加入すべき理由について解説します。
がん団信の概要
まずは、がん団信の基本的な概要について説明します。
先述したように、多くの金融機関が住宅ローンの金利に上乗せする形で団信の保険料を徴収しています。これはがん団信も同様です。
はっきりと「保険料」という形で徴収されていないので、人によっては保険料を支払っている自覚がないというケースも珍しくありません。
さらに、がん団信は生命保険の一種なので、加入にあたっては健康状態を告知する義務があります。
団信の健康告知は通常の生命保険と比べた場合、必要な告知項目が少ないため加入しやすいといえるでしょう。しかし、特定の持病や既往症を持っている場合、団信に加入できないことがあります。
そういった場合、住宅金融支援機構の「フラット35」のような、団信の加入が必須条件となっていない住宅ローンを組むのも選択肢のひとつです。
最後にがん団信において保険金が支払われる(ローンの残債の返済が行われる)条件についてですが、「医師が契約者に対し所定のがんであると診断確定を行う」となっています。
そのため、保険料を受け取るためには、がん治療を受けている医療機関と連携する必要があります。
日本人は2人に1人がんにかかる
がん団信へは、なぜ加入すべきなのでしょうか?
その最も大きな理由が「日本人は2人に1人がんにかかる」という事実です。
国立がん研究センターの2017年の調査によると、日本人が生涯でがんに罹患する確率は、男性65.5%、女性50.2%となっており、これは2人に1人という割合になります。
また、がんの死亡率に関しては、男性が23.9%(4人に1人)、女性が15.1%(7人に1人)という結果が出ていることからも、日本人のがんに関するリスクは決して低くないことが分かります。
出典:「最新がん統計」(国立がん研究センターがん情報サービス)
(https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)
がん保障付き住宅ローンはどんな人におすすめ?
前項では、がん団信の基本と加入すべき理由について解説しました。
それをふまえたうえで、がん保障つき住宅ローンは具体的にどういった人におすすめなのかについて解説します。
がん保障付き住宅ローンの必要度はどれくらいなのか?
基本的には、住宅ローンの返済リスクが高い人ほどがん団信の必要度が高いといえます。
返済リスクが高い人の例として、「収入よりも借入額が大きい」「家族の収入源が夫(妻)のみ」などが挙げられます。
とくに諸事情により配偶者が就労できない家庭は、共働きの家庭などと比べると病気や退職によるリスクが高いといえるでしょう。
こういった家庭の場合、がん保障付き住宅ローンのメリットは大きいです。
しかし貯蓄が十分にある家庭であれば、返済リスクが低いのでがん団信を付けるメリットは低いといえます。
また、すでに通常のがん保険に加入している人も、同じくがん団信への加入メリットは低いです。なぜなら、両方に加入することで保障内容が重複してしまうことがあるからです。そうなった場合、無駄な保険料を支払うことになってしまうでしょう。
このように、がん団信への加入はメリットとリスクを考慮してから決定する必要があります。
お金のことを相談できるプロがいる
がん団信もそうですが、住宅ローンにまつわるお金の問題は、慣れていないと難しいことかもしれません。制度の仕組みや条件など、内容が複雑に感じるようであれば、専門家に相談してみると良いでしょう。
今回紹介したがん団信をはじめ、住宅ローンにおけるお金の諸問題については、資産形成・家計見直しのプロフェッショナルであるファイナンシャルプランナー(FP)などに相談するのもおすすめです。FPに相談することで、理解しにくかった制度の内容や不安の解決策を得られるかもしれません。
ファイナンシャルプランナー以外にも、大手保険会社などが開催する資産形成セミナーなどもあるので、インターネットで幅広く探してみてください。
まとめ
今回は、住宅ローンにおけるがん保険の必要性のほか、団信の仕組みや契約に向いている人について解説しました。
住宅ローンの返済リスクを考えた場合、団信をはじめとしたがん保険は、リスク軽減につながる有用な保険制度だといえるでしょう。
とはいえ、がん団信の必要性は家庭状況やリスクへの考え方によって変わるものなので、加入はよく考えてから決定することが大切です。がんが発症したからといって、必ずしも住宅ローンの返済能力を失うとは限りません。
もしも加入すべきか判断が難しい場合、記事でも紹介したようにFPなど資産形成のプロに相談するのがおすすめです。
制度についてよく理解したうえで、納得できる決断を行いましょう。